>>193結論から言えば質問者さんの望むサービスは限りなく不可能に近いと思います。
いくつかの論点が混じる話なので難しいかもしれませんが、なるべくわかりやすく説明できるように努力してみますね。
まず広告ビジネスとは何か? について。
無料プラットホームにおける広告とは、WEB広告のこと。WEB広告は大まかにバナー広告と動画広告があります。(細分化したらもっとあると思いますが、ひとまずはこれだけ頭に入れておけばいいです)
で、ここで考えなければいけないのは「広告はなぜビジネスとして成立するのか?」です。
広告を出稿している側は、何を目的としてWEB広告を掲載しているのでしょうか?
目的は大きく分けると2つ。
「認知の拡大」と「顧客の獲得」です。
この2つは同時に狙うこともありますが、基本的にはどちらを狙うかによってアプローチが異なったり、広告料金が変わったりします。
「認知の拡大」で求められるのは、とにかく膨大なPV数です。たくさんの人に目に入ること、記憶に残ることを目指します。バナー広告や動画広告を目に入れさせることを重視し、クリックされることはオマケ程度に考えます。
「顧客の獲得」で求められるのは、クリック率、クリック数、遷移後の契約成立数です。実際に広告を見た人間が広告主のサービスにアクセスし、何らかの契約を行なうことを目指します。商品の購入、無料会員登録、などなど。広告主の戦略によって、何をゴールとしているかは変わります。
上記の2点に価値を見出して、広告主は広告を出してくれるわけですね。
まずこれが大前提の知識となりますので頭に入れておいてくださいませ。
さて、そんな広告ビジネスですが、そもそもいったいどれくらいお金になるのか、ご存じでしょうか?
広告の種類にもよるのですが、一般的に1PVあたり0.2~0.3円とされています。
1ヵ月200~300万円ほどの売上を達成するためにはざっくり1000万PVが必要になります。
1日あたりざっくり30万PV。これを、作品単体で達成できなければ、作品をプロレベルのクオリティに保つ場合(編集者、校閲、イラストレーター等と通常どおりに作品を制作する場合)黒字化すら不可能です。
なので、まず、ビジネスモデルとしてそもそも実現困難という事情があります。
広告収益型のプラットホームが作家に対して責任を持ち、利益分配をする場合、クオリティを保ちながらではほぼ確実に黒字化できません。現在、小説プラットホームがビジネスとして成立しているのは、作家の参入障壁を極端に低くして、数多の書き手が無償で勝手に書き続けてくれる環境だからです。作品に対して1円もコストを払っていないからこそ、広告ビジネス程度の収益でも成立しているだけ、とも言えます。
ちなみにライトノベルだけでなく、漫画アプリも、広告収益ではまったく成立しません。単話課金も大きいとはいえ、それでも単行本や単行本のデジタル販売がなければ黒字化困難な作品がほとんどだと思います。
ではYouTubeはなぜ成立するのか? YouTubeは広告収益だけで大きなビジネスになっているじゃないかと思われるかもしれませんが、そう思われるのであればYouTubeおよびGoogleを侮りすぎています。GoogleはWEB広告においてトップの中のトップ。元締めみたいなものですし、莫大なスケールメリットを誇ります。そこが提供しているプラットホームのパワーを出版社が新たに作るプラットホームに期待するのは難しいでしょう。
……と、ここまでは広告ビジネスの側から成立の難しさを語っていきましたが、続けて「作品の内容・プロの品質」についての話をしていきます。
質問者さんは「プロの作る高品質な作品」というものに価値を感じてくださっていて、私個人としてはとても嬉しいですし、その感覚は是非持ち続けてほしいなと思っています。
が、この「品質」という概念を正しく理解できると更に視野が広がるのかな、と。
「品質」とは、あらゆる場所、あらゆる時、あらゆる環境で不変のものではありません。「品質」の評価は条件・定義を変更すると、ガラリと変わってしまうものなのです。
作品も同じです。そして作品の内容、品質の評価は、それを公開する場所――より正確に言うとビジネスモデルによって変わってしまいます。
質問者さんが好きな作品内容、プロの作品の品質は、「1冊通して読んだ満足感が高い」だったり「キャラクターを好きになれる」だったり「先が気になってどんどん読みたくなる構成力や表現力」だったりを指していると思われます。
ですがそれはあくまでも「お金を払って文庫を購入し、読んでもらい、ファンになってもらって、次の本も買ってもらうビジネスモデル」の環境下で優れた作品であるというだけで、他の環境でも正しいとは限らないのです。
そんなわけないだろう、最大限に感動できる凄い作品のほうが品質が良いに決まっているだろう、と思いますよね。わかります。でも違うんです。
ここで広告収益モデルのことを思い出してみてください。広告にお金を出してくれる広告主の人たちは、何を目的としているんでしたっけ?
そう。「認知の拡大」と「顧客の獲得」でしたね。では、広告主にとって最も好ましい状況は何でしょうか?
作品のクオリティが高く、感動が強く、満足感が高い作品がたくさん読める! ⇒確かに、これによって読者が増えれば「認知の拡大」には大いに寄与するかもしれません。ところがクオリティの高い作品はとうぜん生み出すのが難しく、作品数が増えにくい。バナーによる「認知の拡大」に頭打ちが来るのも早いような気がします。
「顧客の獲得」の面ではどうでしょう? すべてがハイクオリティで面白い作品ばっかりで、しかも質問者さんの仰る通り、小説は読むのに時間がかかるわけです。この場所を離れたくなくなりません? わざわざバナーをクリックして、他のサービスに浮気している場合じゃなくなっちゃいますよね。
……と、いうわけで、「どっぷり浸かるような物語体験」は、広告モデルのプラットホームにおいて必ずしも「最も好ましい品質」とは言えないのです。
あえて悪しざまな言い方をすると、「プラットホーム自体にはいつきたくなる程度(完全に見限られずには済む程度)に面白くて、時々ほんのり飽きて他のサイトにも回遊したくなる程度につまんないことがある」くらいの環境にプラットホームを保っておくのが最も好ましいのかもしれないわけです。
これはわかりやすくするために言っているだけなので、実際はそんなこと考えてないプラットホームがほとんどだと思いますが。
とにかくそのプラットホームがどのように稼いでいるのか、どんなビジネスモデルなのかによって、何が高品質とされるのかは変わるということですね。
なので広告モデルで運用した場合、質問者さんの求める高品質な作品は結果が出せず、自然淘汰されていき、いずれは現在の広告モデル運用のプラットホームと同じような環境に収束していくことが想像できてしまいます。
「ビジネスモデルによって作品の正解は変わってしまう」これを理解いただき、自分の愛する読書体験に続いてほしければ、しっかりそのビジネスモデルのお客さんとして消費をしていってほしいなと思います。それができない、時代に合わない、というのであれば、このビジネスモデルで、この内容クオリティで、という作品はいずれ滅びてしまうのでしょう。とても、残念ですが。
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